捏造と演出の境

昨今では、番組捏造問題が取り沙汰され、番組の過剰演出が問題となっている。

少し古い話を持ち出す。

約3年半前、2003年10月19日に、TBS『ZONE』放送された「我ら花の東大応援部」。普段は主役になることがない応援部の特集だった。

2003年東京六大学野球秋季リーグ戦は、例年に比べると、東大野球部は健闘を見せていた。番組の中でも、東大野球部が、9年ぶりに慶大野球部から白星を奪った試合の映像は重点的に流れていた。ところが、その試合の映像の中に、翌週の対法政戦の映像が盛り込まれていたのである。

TBSに問い合わせ抗議したところ、『ZONE』を制作している会社の連絡先を伝えられた。
直接、番組担当者と話すも私の話に聴く耳を持とうとしない。さらには、「どうしてクレームを言われなければならないのか」と逆ギレされる始末だった。

厳しい夏合宿を乗り越えた応援部1年生が、憧れのリーダー台(注)に上がることができたのは、対慶應戦ではなく、東大にとっての最終戦を目前に控えた対法政戦なのだ。

慶應戦と対法政戦の感動は異なるもの。

釈然としない思いを抱えた私は、元NHKのディレクターに事実をぶつけると、「(君は)テレビの演出がわかっていない」と言われ、『ドキュメンタリー映画の地平』(下)という1冊の本を手渡された。

テレビ番組を演出する上では、当たり前のことなのかもしれない。
では、どこまでが、‘当たり前’の範囲なのか。
 
番組を見ている人には何気なくとも、その場を東大応援部と共有していた者にとっては、各々のシーンで抱いた想いは違うのだ。

今回のケースは、たまたま私がその場に関わっていたから気づいただけであって、似たような話は星の数ほどあるだろう。
 
果たして、これを捏造といえるのだろうか。

3年以上経っても、私の中では、答えは出ていない。

(注)リーダー台・・・東京六大学野球の応援席に設けられているリーダー台は、通常各大学の応援団・応援部の幹部が使用する。