確定申告珍道中

 タレントのベッキーが、e-Tax国税電子申告・納税システム)を体験し、「画面通りにやれば簡単で楽しく申告できました。皆さんも利用してみてください」とは言うものの、アナログな私はそうはいかない。

 しかも、この2月、人生初の税金に関する処理を行うのだ。
名目は医療費控除。歯の矯正で、めまいを起こしそうなほど、治療費がかかっている。

対面でなければ不安な私は、年休を取り、勤めている会社から受け取った源泉徴収表、医師の診断書、医療費の領収書を携え、税務署へと足を運んだ。

 税務署へ行くと、すぐさま申告書自動作成コーナーに案内される。何台ものパソコンが並べられ、係の人が様々な人の質問に答えている。思惑が外れた私は、申請書を作成し始めたのだが、源泉徴収表を持っていても、逐一係の人に尋ねないと、どこをクリックし、どこに何の数値を入れてよいのやら、さっぱり分からない。複雑怪奇な処理にみえる。

 やっとの思いで、入力を終え、確定申告書を作れたと思ったら、どうやらお金を振り込んでもらえる口座番号が必要だったらしい。しかも、常識のない私は、印鑑も忘れてしまった。

困っている私に、職員は「後日必要事項を記入し、ご捺印の上、郵送にてお送りください」と教科書通りの対応。

せっかく会社を休んで来たのだから、ここで帰る訳にはいかない。
どうにかならないものか――。

そこで、税務署の脇にある税務相談所に駆け込んだ。
税務相談所の税理士の方は、面倒見がよく、私が抱える問題を解決してくれた。

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☆ハンコを忘れてしまった場合
⇒拇印でも可能

☆振り込んでもらえる口座番号が分からない場合
⇒その支店に自分の口座だけが一種類の預金をしていれば、口座番号を記さなくて可能

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指紋を届けに使うことは抵抗があったが、その日に申告を済ませるためには拇印しかな
い。朱肉をつけた親指をエイヤ!と押した。「さっきとは違う窓口へ行け」という税理士さんの指示の下、無事に申告書を提出し、口座番号は別途電話で伝えることになった。

 申告書の作成に手間取ったこともあり、税理士さんに税金に関することをいろいろと質問してみた。親切に教えてくれたのだが、私は理解しきれない。

頭の中が、税金用語で溢れかえり、消化不良に陥ってしまってしまった。申し訳ない顔で税理士さんを見つめた。

 その税理士さんは、言うには、
 「小学校も中学校も税金の仕組みは教えない。‘納税の義務’だけ教えるのはおかしい」そうだ。確かにその通り。

 自分から出ていくお金の仕組みがよくわかっていないのだから、使われているお金は尚のこと。
私が今、世界一受けたい授業は税金の仕組みである。

(敬称略)