「いただきます」

 2005年秋に放送された永六輔氏のラジオ番組を発端とした‘いただきます論争’を知っている人は多いだろう。

 ラジオ番組で、次のような話が紹介されていた。

 ある小学校に通う児童の母親から、「給食の時間に、うちの子には『いただきます』と言わせないでほしい。給食費をちゃんと払っているんだから、言わなくていいではないか」という趣旨の意見が出たという。

 それがPTAで問題になり、結局、『いただきます』を言わなくてよいということになったから驚きである。

 一方で、経済的に余裕があるにも関わらず給食費を納めない保護者がいる。給食費の滞納費は今や22億円を超えている。

 このニュースを知ったときは、給食費をきちんと納めているこの母親が少しはまともなのかと思えるのだから恐ろしい。

 そう考えていくと、給食費もきちんと納め、目の前の食卓を迎えることに対して感謝して『いただきます』と言い、「世界には食べたくても食べられない人がいるのだから、好き嫌いをせずに食べなさい」と叱って育ててくれた母親に改めて感謝したい。

 食材を作ってくれた農家の方々、食材が加工され私の食卓に並ぶまでに携わった人た
ち、料理を作ってくれた人たち、そして、ここまで育ててくれた両親、自分につながっている全ての人に対して――。

 「いただきます」